マイ・ラスト・ソング

hajimechan2008-01-31




♪あなたとふたりで来た丘は 
 港が見える丘 
 色あせた桜ただ一つ 
 淋しく咲いていた



寺内貫太郎一家」「時間ですよ」の演出で名を馳せた久世光彦は、
視聴率が上がらなってからも、
まるで魅入られたように向田邦子の作品を撮り続けた。


ガラガラと引き戸を開ける音や板廊下の軋む音、
ちゃぶ台と家族一緒の食事にこだわり、
現実の家族とは遠く離れてしまった。


晩年は自身のラストソングを追い求め、
人に会う度に同じ答えを尋ねたという。
ぼくはそんな久世が綴る昭和ロマン漂う、
随筆や小説を贔屓にしていた。


人生の最後に聴きたい曲はなんだろう?
たぶん下世話な流行歌がいいな。
それも枕元に置いた小さなラジオから微かに流れてくるような。
そう、久世のラストソング「港の見える丘」みたいに。