*満ちて欠ける ♪夜空に光る 黄金の月などなくても 年も明けたが、哀しいほどに感慨がない。 その思いは年々切実になり、 ついには恩讐の彼方へと消えてしまうのか。 今年もあらゆるものを捨て去るのがテーマだ。 記号化した日常、薄っぺらな夢、 おどおどし…
*夜 遠くに行こうと思ったけど、遠くには行けなかった。 エリンギとセロリを炒めたら、ほろりとした。 スピンオフの映画を見たら、がっかりした。 誰からもらったのかも忘れたイヤリングを、片方なくした。 不在着信が二件、迷惑メールが五件。 風が窓をゆ…
♪世界が終わるなんて予言は信じない 光の帯の中で、君を抱きしめる 雲海の切れ間に浮かんだ孤島に漂着するように、 機体は上下しながら、 ゆっくりと海の上に滑り降りた。 空港ロビーを出ると、雄大な山の背が拝める。 しかし、旅人のかすかな期待を裏切り、…
夏の終わりは、だれもが感傷的になるものである。 否、なってもいいのである。 あんなに嫌味嫌っていた強すぎる日差しも、 蒼すぎるほど蒼かった空の色も、 いま飲み干したハイボールの泡のように消えてしまい、 何か大事なものを忘れてきてしまったような、…
*モーニングバリ 漆黒の夜が明けて、遠くの水平線が赤みを帯び始める。 まだ眠たい目をこするようにじんわりと時間は流れ、 人々に静寂なリズムを刻んで、ハンモックみたいに揺り起こす。 老犬が訳知り顔で海をみつめている。 私に気がつくと、憐れんだ表情…
*さよならゲーム 松井がメジャーに上がってすぐにホームランを打った。 今後どうなるかはわからないけど、 節目の試合での強さは相変わらずだ。 記事を読んで知ったが、それまで松井が汗を流した レイズ傘下の3Aダーラム・ブルズは、 ケビン・コスナー主演…
ぼくのポケットの底はほころびていて、 よくモノをなくす。 それも、大事なモノばかりなくしてしまうので、 しまつが悪い。 あとになって気がついて、あわててポケットをまさぐってみるけど、 いつもあとのまつり。 みちばたに座りこんで、頭をかかえてみる…
♪とてもできないと思ってた メロディーが生まれそう 一年が経った。 もうじき春である。 3月に入って電車が空いてうれしい。 けれど4月にはまたドカンと混雑する。 相変わらずスマホ野郎のトロくささや、 横並びで歩くおばさんたちには辟易するが、 春だも…
酒をのみほす清清しさで1月が過ぎた。 とはいえ、年明け京都で呑んだ原酒の咆香が、 まだ口元に残っている。 未練がましいのは私で、流れ去る月日ではない。 老いさらばれるのは私で、流れ去る月日ではない。 毎夜寒さに震えながら家路に着き、 一杯の酒に…
*別れ雪 レースが終わった途端、みぞれまじりの雪が落ちてきた。 それは、髀肉之嘆に明け暮れた今年への哀号なのか、 有終の美を飾れなかったブエナへの鎮魂なのかは知らぬ。 ただ天が与えもうた南柯の夢の如き演出を、阿呆然とした目で追いかけていた。 つ…
♪小学生くらいの男の子 世界のどこまでも飛んでいけよ ロックンローラーになれよ byくるり 瞼の先を交差する斜線に思わず空を見上げるように、 年の瀬とは人を振り向かせるものだ。 たった一年ではこれっぽっちも代わり映えしないが、 然もいろんなことが起…
頼りないワンセグ画像で雪の妖精が他馬を一蹴したのを見届けると、 あかね雲を切り裂いてジェットの爆音が耳をふさいだ。 急に冷え込んだ風がこちらに舞い戻る。 ため息にもならない脆弱な息をひとつ吐き、空をあおぎ見たら、 孤独が蓋を開けてオレを待って…
雲消えし秋のなかばの空よりも 月は今宵ぞ名におへりける 今年の十三夜は10月9日だという。 不完全なもの、不格好なものに美徳を見出し尊むというのは、 日本人の感性ならでは。 G1秋緒戦スプリンターズステークス。 単勝1.5倍ダントツ人気のロケットマン(…
勝つ方も、負ける方も、同じように何かを失う 勝つ者の方が、大きいものを失うことが多い 阿佐田哲也 競走馬がはずれ馬券のゴール板を駆け抜ける。 それでもなぜか、胸がスッとするときがある。 潔さとでもいうのか、 腹にためていた憑物が落ちるように、 心…
*阿蘇エヴァーグリーン ♪クレイジーサマー 寄せては返す波と光の中 砂をつかむ思い 郷愁を誘う美しい稲穂がゆれる。 うねった道を抜けると、 緑濃い森林の上に雄大な阿蘇五岳の輪郭が飛び込んでくる。 私は夏の光のなかで、しばし絵画を眺めるように見惚れ…
*ジェームスディーン ♪欲しいものは見えている 水の中に僕の影を追う 夏の陽ざしの中で、ぼくらは溺れていた。 インクを垂らしたような完璧な青空と、 絞めつけるようなゴワゴワとした水の抵抗が支配する世界で。 生きることにもがき、 飲み込んだ水にもが…
福島の津波被害が大きかった町に取材に向かう。 仙台から車で一時間の旅だ。 沿岸から続く平地はまっさら。 集められた瓦礫の山に圧倒される。 しんと静まり返った港には、 漁に出られない漁船が墓標のように鎮座している。 熱心に当時の状況を説明してくれ…
不良馬場のダービー、切れ間のない雨が降り続く。 焦燥と化した不安、世を嘆き、時を知り、 それでも満艦飾の傘の花が咲くスタンドに響き渡る歓声。 ぬかるんだ芝生にもめげず勇ましく駆け抜けた、 オルフェーヴルの強さに脱帽でした。 さて、こんなご時世に…
どんな春も桜は咲く。 スーパーひたちが不通のため、常磐線でとことこ水戸へ。 途中、停車駅で激しい揺れに遭遇も、 何事もなかったように列車は走る。 土浦を過ぎた辺りから民家の瓦屋根にブルーシートが目立ち、 偕楽園の門柱も倒れ掛かっていた。 ただ、…
「政治ができるような正しい生活はしてこなかった。 多くの女性と関係を持ちすぎたし、薬物も使いすぎている。それが事実だ」 報道の自由を奪った赤狩りを描いた『グッドナイト&グッドラック』を監督。 中東の石油利権問題を描いた『シリアナ』では製作総指…
♪Golden slumbers fill your eyes Smiles awake you when you rise Sleep, pretty darling, do not cry And I will sing a lullaby 真白き駅に降りぬ。 大河ドラマでトヨエツ演じる信長のお決まり 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」の…
冬蜂の死にどころなく歩きけり 年末は仕事で忙しく、有馬記念はトリガミに泣き、 返す刀の実家で痛飲し、 紅白も除夜の鐘も年越しそばにもありつけず年が明けた。 おまけに初夢はひどい夢でうなされる始末。 年を跨いでも私用に蹂躙され、金杯も玉砕しロクな…
私が2010年において最も驚嘆したのは、 iPadでもアバターでもWカップサッカーのジャパン躍進でもない。 「ヤマサ 鮮度の一滴」であると断言できる。 私は帰宅途中、スーパーのしょうゆ棚でそれを見つけた。 透明なプラスチック容器に包まれたフォルムは…
出張族に奈良は遠い。 競馬で浮いた金ほどの浮遊感で夜駅に降り立てば、 そこにいとしい鹿の姿はない。、 思いのほか低い伽藍の真上に、 ぽっかりと穴が空いたような満月だけが、 かつての平城京の栄華のように煌々としていた。 私たちは明かりの消えた土産…
ピクチャーズ製作の全編CGアニメ『WALL・E/ウォーリー』に琴線も濡れるぅ(笑)。 子ども騙しと侮るなかれ、愛しく、美しく、切ない。 冒頭、荒廃した地球にたったひとり取り残されたウォーリーが、 せっせとゴミ処理に励むシーンがサイレント映画のように延々…
♪肩にまつわる 夏の終わりの 風の中 まつりばやしが 今年も近づいてくる 丁度 去年の いま頃 二人で 二階の 窓にもたれて まつりばやしを見ていたね けれど 行列は 通り過ぎていったところで 後ろ姿しか 見えなくて 残念だった >>まつりばやし いつしか陽は…
*Zola with a blow and goodbye スプリンターズステークスで99倍ゲットしたと思ったら、 翌週3連単を入力ミスというチョンボで失墜してしまった報いか、 秋華賞ではまたしてもアハパネにしてやられる。 なんか一気に運に見放された感じ。 私にとってアパ…
♪宵の明星 ふう手が届きそう ふりむけば すっかり青い夜 コンビナートが ああ煌いていた 遥かなふもとに >>私を忘れる頃 自分は勤勉ではない。 スキあらばサボりたいし、仕事に向かう腰も重い。 それでも人並みの自制心に伴う責任感みたいなものも存在するの…
女の膝はどこか似てるよ 今宵の月に >>セレーネのセレナーデ. 夏の終わりになるとぼくはバトリス・ルコントの「イヴォンヌの香り」を思い出す。 美しい湖畔の避暑地で毎夜繰り広げられるパーティ、 クルージング、テニス、ドライブ。 抗うことなく運命の女に…
私の世界はしごくふつうにまわっている、 いるようにみえる。 毎日手足をバタバタさせていたり、 しょーもないことで傷ついたり、 カップめんにお湯を注いだり、 人並みに日本の将来を憂いたりしているが、 そんなことは日常のほんの一部に過ぎない。 あらゆ…