十三夜


雲消えし秋のなかばの空よりも 月は今宵ぞ名におへりける




今年の十三夜は10月9日だという。
不完全なもの、不格好なものに美徳を見出し尊むというのは、
日本人の感性ならでは。


G1秋緒戦スプリンターズステークス
単勝1.5倍ダントツ人気のロケットマン(外国馬)はその馬名が示す通り、
21戦して連を外していないというシンガポールからの刺客です。
スピード、調教文句なし、
もとより近年スプリント路線では、日本馬の弱さが顕著の中、
前哨戦の香港馬二頭と比較しても、
海外の実力馬に敵うはずがないというのがオッズの根拠でした。
しかし、競馬は競馬。
ゲートでビービーガルダンが放馬してスタートが大幅に遅れるという不運もあり、
本来の実力?を発揮することもなくあっさりと敗れました。


さて、私はどう買ったか。
低配当を覚悟で馬券をしぼってロケットマンから買い、
かつ10倍を超えていたカレンチャン単勝も少し買うという、
なんとも中途半端な馬券に。
小額購入者なら大穴をねらうべきであるのはわかっています。
でも、競馬はそれだけではない。
強いものを目にしたいという単純な憧憬もあるのです。
私は中山のターフを一頭だけ次元の違う脚色で駆け抜けていく勇者の姿を
夢見ていました。
ですから、単勝は獲得っても少し拍子抜けしてしまったのは事実です。


そして深夜の凱旋門賞では、日本の二頭が玉砕するのを目にしました。


結局、私の脳裏に強烈に光を放ったのは、
放馬したビービーカルダンでした。
乗り手もなく永遠と場内を回り続ける一頭の雄姿に歓声を上げるスタンド。
そのざわめきと馬の姿が十三夜の月あかりに照らされて、
何度も夢枕に去来するのでした。