照柿
♪真夜中の冷蔵庫に手をかけて
そして本当のことが知りたいんだと君は言う
食べかけのピザをそっとかたづけて
誰も聞こえない声で君は歌ってる
佐野元春を聴きながら、
だらだらと仕事にはげむ
彼は歌う
"傷ついたのは君のせいじゃない"
昨夜は文庫本化された高村薫の「照柿」を再読。
狂いだしそうな沸点の夏、
合田雄一郎刑事は乗り合わせた電車で飛び込み自殺に遭遇。
そこで出会った美保子に一目惚れしてしまう。
「罪と罰」をモチーフにしているというが、
まさに照柿色に焼けつく陽射しの中で、
徐々に崩壊していく刑事、犯人、女。
高村薫の小説は、どれも細微まで徹底的に描く。
主人公を、犯人を、鋭利な刃物で切り刻む。
状況は悪くなるばかり、
何も解決しない、
何の救いもない。
ただダメになってしまう。
「レディジョーカー」なども、読み終えたときは
正直ぐったりしてしまった。
とても健康な人間にオススメできる小説じゃない。
![照柿 照柿](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/11Q39XRN05L._SL160_.jpg)
- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 講談社
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結局、人間は運命には逆らえない。
また逆らおうともしない。
まるで食べかけのピザを眺めるように、
そのことが痛切に残る。
うだるような夏の盛りに、
こんな暑苦しい小説を読む私もどうかしている。
佐野元春を聴きながら、
だらだらと仕事にはげむ
彼は歌う
"時が流れても何も変らない"