消え物

hajimechan2006-12-15



♪いつものように 幕があき
 恋の歌うたう私に 届いた報せは
 黒いふちどりが ありました



歌舞伎の舞台で役者が口にする食べ物や散り花、
お香のことを『消え物』という。
つまり、その日一日で消えてしまうモノのことを指しているのだ。
考えようによっては人間も賞味期限のある「消え物」なわけで、
だからこそ、役者は一日の舞台に命を張るのだ。


同じように歌舞伎には、文字通り「幕く引き」という専門職があって、
人間の手でに鮮やかに舞台の幕く引きを演じる。
芝居の段取りや役者とのタイミングを舞台袖からはかりながら行うのは、
かなり年期のいる仕事なのだろう。


さて、私たち一人ひとりの「消え物」も、
大事なのは「幕く引き」だろう。
できうるなら万来の拍手の中、潔く幕を引きたい。


暮れる年も同じ、思いや後悔を残すことなく
何汚すことなく次の年を迎えよう。