球春にモノ申す




春、サクラが咲いて野球の季節である。
もう少し暖かくなったら、渇いたパットの音が響く外野スタンドに陣取り、
ビールをやりながら観戦したい。
まわりくどい話はしたくない。
ましてや余計な戯言はつきたくない。
心のあるまま、風の吹くままに、
ただ球道を追いかけていたい。


若い芝の匂いを嗅ぐなら、
競馬場にくりだすのもいい。
馬券はどうでもいい。
蹄の音を聞くだけで、心が晴れる。
迷っているんじゃない。
ただせわしなく心が揺れるだけ。
マークシートに記入するだけが、生きる術じゃない。


春の海もいい、少し寒いくらいの。
卸したてのシャツのような水平線を見守り、
人もまばらな砂浜に腰掛けて。
うつむいているんじゃない。
銀箔に輝く波間がまぶしいだけ。
沖を行く船のように、ゆっくりと漕ぎ出したい。
はぐれ飛ぶカモメのように、悠々と海を渡りたい。
不安はある。焦燥はある。
それでも、越える強さもある。
春に駆けだす、そう、
その意気さえあればいい。